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 12月のボーナスフライデー この日は期待はするものの、12月の上旬てそれほど動かない。 今日の日中もご多分に漏れず、師走の雰囲気はなかった。 その上、タクシーが多い! 誰や、タクシー不足なんて騒いでたのは そんな中夕方は三宮でちょこちょこ仕事していた。 鯉川筋の北側で乗客を降ろした後、発進しようとすると、右後方から軽自動車ぽい車が来てブレーキをかける。 なんていう車やろ 水色で、ちょっと目立つ感じやったけど、車の仕事してる割に、車に疎い そのとき俺の前に停まっていた車が動き出す ドン!! 鈍い音が聞こえた 嫌な音や 少し前に自分も事故したばかりやし 事故はほんまに怖い 目の前で見て、また発進時の安全確認の大切さを実感した。 12月6日(金) 73,800円 36回 12月度累計 560,600 9乗務 平均62,289

母が…

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 昼過ぎ磯上公園横でゆっくりしようと車を停めて、スマホを見ていると、 20代くらいの女性が窓を叩いてきた 「あ、どうぞ」 「すみません、掖済会病院まで」 「掖済会ですか…(はて)」 大阪本田と、えーと 「ここです(スマホを見せて)。垂水のゴルフ場の横」 「あー、はい。分かりました。(ナビで)確認しますね」 おー、ラッキー と思いつつ車を走らせると、女性はどこか(自分の会社?)に電話している。 「あ、はい。すみません。母が突然倒れまして、急いでそちらに向かいます」 お母さんが倒れたのか… タクシーではたまにあることだが、ラッキーなんて言ってる場合ではない。 緊張感が流れる。 その後ほとんど会話もなく、目的地に着く。 「8,040円です」 支払いを終えると、女性は小走りで病院に入っていった。 お母さんは大丈夫やろか。 知る由もない。 恐らく、この先彼女と会うこともないやろうし、もちろんそのお母さんがどうなったのかなどと考えるのはそのときだけで 彼女とお母さん、過去と現在、これから先 お父さん、お子さんがいるのかもしれない。 彼女のまわりで繰り広げられるドラマ その一端に触れることが出来た。 あのときのタクシー運転手 いつか思い出してくれる日があるだろうか。 気を使って、急いで病院まで送ってくれた。 何も聞かないで… もし思い出さなくても、彼女の人生の一瞬に関われたことは光栄である。 そんなことを一日に40回、50回 多くの人生に触れて、そしてその多くは2度と会うこともない。 タクシーのわびさびとでも言うのだろうか。 そこが楽しさでもあり、切なさでもある。 また明日も、新しい、2度と会わない出会いがある 12月4日(水) 68,910 41回

「わし、裏の(世界の)SPやねん」

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 今日の昼前、そこそこの遠方仕事があった。 池田の葬儀場まで 「実は昨日妹が亡くなってな」 「そうなんですか。それでもう今日葬儀ですか」 「ほんま、突然やで。明後日が友引なんやけど、明日は空きがなかったみたいや」 「大変ですね」 「ええ歳して、外国行ったり来たりしてたから、(そんな生活は)良くない言うたんやけどな」 「女性で79歳なら、まだそんなに亡くなる年齢ではないですよね」 「わしもずっと海外ばかり行ってたんやけど、もうさすがに大人しくしとるわ」 「そうなんですか。どちら(の国)へ行かれてたんですか」 「世界中や、わしは元SPやねん、SP言うても、よく政治家とかの横に立ってるのは『表のSP』や、わしは裏のSPやったんや」 「裏のSPですか?」 「そうや、わしらの世界では『スッパ』とか、『ラッパ』とか言うんやけど、わしは『スッパ」の方や」 「はぁ…(『スッパマン』みたいやな)」 「スッパより、ラッパの方が強いねん」 「そうなんですか(わけわからんけど)」 「名刺はD社(関西の自動車会社)の部長の名刺を持ってな、実際はSPの仕事をしてるんや」 「そういう仕事をするのは、何か国家試験とかあるんですか?」 「表立ってそんなもんあるわけないやろ。家系で決まってるんや。わしは5歳の時からその(SPの)訓練受けてる」 「5歳からですか」 「そのせいでな。灘中時代は高校の柔道部の先輩投げ飛ばしたり、友達をかたわにしたりな、いろいろ武勇伝があんねん」 「灘中…ですか」 「仕事を始めてからは、中国へ行ったり、今戦争やってるウクライナへ行ったり、共産圏が多かったな。そういうところへ日本の首相とかが行くのは危険だから、事前に現地に入って調査したり、危険なやつらと闘ったりな」 「はぁ…(漫画の世界やな)」 「年に一回、武術の大会があってな。それで負けたらその仕事も終わりや。わしは50歳くらいのとき負けて、そのときの傷が今も左肩に残ってるんや」 こんな話を現地に着くまで30~40分聞かされていた。 どこまでほんまなのか、作り話なのか。 そもそもドライバーにこんな話して何になるのか。 話聞くのが仕事とは言え、真偽不明な話を長々と聞くのはさすがに疲れる。

「××さん、彼氏いんの?」

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 深夜、ラーメン屋の前から20代らしき若者3名の乗車 どうやら先輩後輩のようだ 先輩1名、後輩2名 うち後輩の1名はすぐに降車 なんとも言えない空気が流れていた 「あのさー…××さんて、彼氏いんの?」 あまり軽い感じの問いかけではなかった この先輩は××さんを狙ってる そんな空気を隣の運転手はしっかりと感じていた ちなみに先輩は助手席 後部座席に2名乗った後輩の1名はいなくなったので、後部は後輩1名のみ 「え…あの、はい」 後部座席の後輩は、戸惑いながら、それでもしっかり問いかけに対してにごさず、はっきりと答えた 「え!…××さん、彼氏いるの?」 先輩は明らかに驚いている 「はい」 少しはにごせよ、後輩 先輩かわいそうやんか 「いや…でも、(付き合い始めたの)最近やろ?」 「1年前くらいですかね」 「1年前…」 この「1年」という期間も先輩にショックを与えたようだ 「いや…良いね!良い話やね」 なんか、先輩開き直ってる 「相手は何、どこの人?」 「いや…」 後輩戸惑う。 言って良いのか、迷ってる 「どこの人よ?」 先輩、強い感じで迫る 「××貿易です(多分同じ会社」 「…あー、そう!良いね!」 身近に相手がいたことにもショックを受けてるようだ 「それで、誰?」 先輩構わず突っ込む この感じで同僚の後輩を売るのか?どうや? 運転手、興味満々で耳を傾ける 「ハナダです」 わー、言ったよ この雰囲気で言ってもうたよ 「…」 先輩も内心ここまではっきり言われると思っていなかったのか、しばし止まる 「ハナダか!良いね。で、告白してすぐOK出たの?」 「すぐだったみたいです」 「あー…、そう」 「ハナダ、嬉しそうによく(彼女と一緒の)写真見せてくれますわ」 「あー、良いね。良かったね!」 先輩傷ついてるやん 後輩、空気読めよ そのうち先輩降車 後輩のみが残って、家まで送る 「今日中国の出張から帰って来たんですよ」 「そうなんですか!それはお疲れでしょう」 「めちゃめちゃ疲れてますよ。それなのに、(さっきの)先輩に飲み誘われて、その後ラーメンまで…しんどい言うたんですけど」 もう1時過ぎ、(××さんの彼氏暴露は)疲れたところを無理やり引っ張りまわされた後輩のささやかな復讐だったのか 後輩、お前の勝ちや ゆっくり休んでください

すごい風ですね!

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 年末も近づいてきて、昼間は少しづつ動きが出てきたんやろか 夕方は思いがけず雨が降って、駅にも人の並びが出来た。 雨が降ればタクシーは動く この単純なイメージはそれほど間違ってはいない しかし 雨の日は事故リスクが高い 同じようなこの単純なイメージに今月はまってしまった… 20年ぶりの事故 詳細はまた書こう とにかく、雨の日の事故やったから、駅に行列が出来てるからといって、うかれてもいられない 緊張感マックスで仕事していた 疲れた… 夜には雨も止んで、動きも鈍くなった 虎の子のサンキューチケット(タクシーGO[)を使う 25時頃やっとGOが鳴る 若い女の子やった 乗車時は、風でドアホルダーを掴んでいないとドアが飛ばされそうやった(大げさやろ) 「わー、すごい風ですね!」 女の子が乗車してくる 若い女の子は近場が多い 特に深夜は、 GOのAIアナウンスが鳴っている 「行き先が指定されています。尼崎市…」 尼かよ ラッキー 乗車時に「風すごいですね」という、ちょっとした会話があった後は、若い子あるあるのスマホ集中 そのうちうたた寝… 到着で声をかける 「この辺ですか?」 目を開けて 「あっ?あー、ここで良いです」 アプリ決済 笑顔で降りていく女の子 9740円なり まあ、助かった 11月27日(水) 66,400円 51回 12月度累計 294,450 5乗務 平均58,890

小銭が…

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 利用者の支払いは不思議と日によって一方通行である 小銭ばかり出される日は、小銭入れに小銭があふれていく 逆に今日は来る客来る客、千円札払い まあええやろ、思ってたらどんどん小銭入れの百円が減っていく 駅前から乗車して、老人施設まで乗られたおじいさんも1300円の料金で、 ごそごそポケットを探っていたが、結局千円札2枚 こちらはもう5百円玉もなくなっているので、100円玉7枚渡す 「ありがとうございます」 おじいさん、なかなか降りない 100円玉をポケットにしまおうとしているが、うまく手が動かないみたい そのまま降りようとして、百円玉を何枚か車外に落としてしまった 小銭がアスファルトに落ちて、転がる音がする 「大丈夫ですか」 後ろを見ると、おじいさん震えながら、転倒した こりゃ大変だ。 車を停めて助けに行くと、施設の職員も飛び出してきた 手を取って起こそうとしていたら、 「車いす取ってきます!」 「お願い」 職員同士で確認を取っている 「どうしましょうか、起こさなくても良いですか」 おじいさんの手を取りながら伺いを立てるが、こちらは無視 なんか俺のせいでおじいさんが倒れたような、責め立てるような雰囲気も感じた ここは任せておこう 「おじいさん、車いす持ってくるみたいだから、まだ少し座っといてください」 手を放そうとすると、シャツに血がついていた…(月曜で洗い立てやったのにな) 「百円が…4枚…」 おじいさんが呟く 「あー、拾いますよ」 駐車場に散乱していた100円玉を集めておじいさんに渡した お礼もない… そんなもんか 11月25日(月) 53,360 39回 12月度累計 228,050 4乗務 平均57,013

運転手の墓場

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今日昼過ぎ、姉から連絡があり、子供がいなかった叔父からの相続の通知が来たことを知らされた。 叔父はトラックドライバーをしていて、羽振りも良く、若い頃はよくご馳走になった。 しかし、ある頃を境に、もう数十年連絡も取っていなかった。 この夏(7月)に亡くなっていたという知らせを聞いて、しばし思考が止まった。 「ある頃」とは20数年前、俺がタクシーに乗り始めた頃である。 俺は若い頃、いや、子供の頃からタクシーに興味があった。 自由な勤務、休みの多さ、一日中大好きな運転、ドライブが出来る職業というイメージで、いつかタクシーに乗るんだという気持ちがあった。 その頃、その夢?が叶ってタクシーに乗ると、まさに運転席は俺がイメージしていた通り、またはそれ以上のパラダイスだった。 自由で、好きなことをしてお金がもらえる。 トラックドライバーの叔父に嬉しそうにそのことを話したんやと思う。 「お前タクシー乗っとるんか…そんなんやめた方が良い。タクシーはな、『運転手の墓場』言われとるんや」 今でも忘れられない言葉である。 それ以来、叔父とは連絡を取っていない。 しかし、今思えば叔父も恐らく軽い気持ちで発した言葉である。 俺がタクシーの楽しさ、そしてタクシーのイメージを変えていくんだという話をしたら、きっと聞いてくれただろう。 同じドライバーとして、いろんなアドバイスもくれたかもしれない。 そんな大事な叔父さん、なにより俺を愛してくれていた人に何十年も会わずに亡くなった知らせを聞いたことにショックを受けた。 タクシーは墓場やない パラダイスなんや もう叔父さんに伝えることは出来ない。 あの頃の俺のような若い奴らに伝えていこう。 タクシーに乗ろう。