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「××さん、彼氏いんの?」

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 深夜、ラーメン屋の前から20代らしき若者3名の乗車 どうやら先輩後輩のようだ 先輩1名、後輩2名 うち後輩の1名はすぐに降車 なんとも言えない空気が流れていた 「あのさー…××さんて、彼氏いんの?」 あまり軽い感じの問いかけではなかった この先輩は××さんを狙ってる そんな空気を隣の運転手はしっかりと感じていた ちなみに先輩は助手席 後部座席に2名乗った後輩の1名はいなくなったので、後部は後輩1名のみ 「え…あの、はい」 後部座席の後輩は、戸惑いながら、それでもしっかり問いかけに対してにごさず、はっきりと答えた 「え!…××さん、彼氏いるの?」 先輩は明らかに驚いている 「はい」 少しはにごせよ、後輩 先輩かわいそうやんか 「いや…でも、(付き合い始めたの)最近やろ?」 「1年前くらいですかね」 「1年前…」 この「1年」という期間も先輩にショックを与えたようだ 「いや…良いね!良い話やね」 なんか、先輩開き直ってる 「相手は何、どこの人?」 「いや…」 後輩戸惑う。 言って良いのか、迷ってる 「どこの人よ?」 先輩、強い感じで迫る 「××貿易です(多分同じ会社」 「…あー、そう!良いね!」 身近に相手がいたことにもショックを受けてるようだ 「それで、誰?」 先輩構わず突っ込む この感じで同僚の後輩を売るのか?どうや? 運転手、興味満々で耳を傾ける 「ハナダです」 わー、言ったよ この雰囲気で言ってもうたよ 「…」 先輩も内心ここまではっきり言われると思っていなかったのか、しばし止まる 「ハナダか!良いね。で、告白してすぐOK出たの?」 「すぐだったみたいです」 「あー…、そう」 「ハナダ、嬉しそうによく(彼女と一緒の)写真見せてくれますわ」 「あー、良いね。良かったね!」 先輩傷ついてるやん 後輩、空気読めよ そのうち先輩降車 後輩のみが残って、家まで送る 「今日中国の出張から帰って来たんですよ」 「そうなんですか!それはお疲れでしょう」 「めちゃめちゃ疲れてますよ。それなのに、(さっきの)先輩に飲み誘われて、その後ラーメンまで…しんどい言うたんですけど」 もう1時過ぎ、(××さんの彼氏暴露は)疲れたところを無理やり引っ張りまわされた後輩のささやかな復讐だったのか 後輩、お前の勝ちや ゆっくり休んでください

すごい風ですね!

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 年末も近づいてきて、昼間は少しづつ動きが出てきたんやろか 夕方は思いがけず雨が降って、駅にも人の並びが出来た。 雨が降ればタクシーは動く この単純なイメージはそれほど間違ってはいない しかし 雨の日は事故リスクが高い 同じようなこの単純なイメージに今月はまってしまった… 20年ぶりの事故 詳細はまた書こう とにかく、雨の日の事故やったから、駅に行列が出来てるからといって、うかれてもいられない 緊張感マックスで仕事していた 疲れた… 夜には雨も止んで、動きも鈍くなった 虎の子のサンキューチケット(タクシーGO[)を使う 25時頃やっとGOが鳴る 若い女の子やった 乗車時は、風でドアホルダーを掴んでいないとドアが飛ばされそうやった(大げさやろ) 「わー、すごい風ですね!」 女の子が乗車してくる 若い女の子は近場が多い 特に深夜は、 GOのAIアナウンスが鳴っている 「行き先が指定されています。尼崎市…」 尼かよ ラッキー 乗車時に「風すごいですね」という、ちょっとした会話があった後は、若い子あるあるのスマホ集中 そのうちうたた寝… 到着で声をかける 「この辺ですか?」 目を開けて 「あっ?あー、ここで良いです」 アプリ決済 笑顔で降りていく女の子 9740円なり まあ、助かった 11月27日(水) 66,400円 51回 12月度累計 294,450 5乗務 平均58,890

小銭が…

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 利用者の支払いは不思議と日によって一方通行である 小銭ばかり出される日は、小銭入れに小銭があふれていく 逆に今日は来る客来る客、千円札払い まあええやろ、思ってたらどんどん小銭入れの百円が減っていく 駅前から乗車して、老人施設まで乗られたおじいさんも1300円の料金で、 ごそごそポケットを探っていたが、結局千円札2枚 こちらはもう5百円玉もなくなっているので、100円玉7枚渡す 「ありがとうございます」 おじいさん、なかなか降りない 100円玉をポケットにしまおうとしているが、うまく手が動かないみたい そのまま降りようとして、百円玉を何枚か車外に落としてしまった 小銭がアスファルトに落ちて、転がる音がする 「大丈夫ですか」 後ろを見ると、おじいさん震えながら、転倒した こりゃ大変だ。 車を停めて助けに行くと、施設の職員も飛び出してきた 手を取って起こそうとしていたら、 「車いす取ってきます!」 「お願い」 職員同士で確認を取っている 「どうしましょうか、起こさなくても良いですか」 おじいさんの手を取りながら伺いを立てるが、こちらは無視 なんか俺のせいでおじいさんが倒れたような、責め立てるような雰囲気も感じた ここは任せておこう 「おじいさん、車いす持ってくるみたいだから、まだ少し座っといてください」 手を放そうとすると、シャツに血がついていた…(月曜で洗い立てやったのにな) 「百円が…4枚…」 おじいさんが呟く 「あー、拾いますよ」 駐車場に散乱していた100円玉を集めておじいさんに渡した お礼もない… そんなもんか 11月25日(月) 53,360 39回 12月度累計 228,050 4乗務 平均57,013

運転手の墓場

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今日昼過ぎ、姉から連絡があり、子供がいなかった叔父からの相続の通知が来たことを知らされた。 叔父はトラックドライバーをしていて、羽振りも良く、若い頃はよくご馳走になった。 しかし、ある頃を境に、もう数十年連絡も取っていなかった。 この夏(7月)に亡くなっていたという知らせを聞いて、しばし思考が止まった。 「ある頃」とは20数年前、俺がタクシーに乗り始めた頃である。 俺は若い頃、いや、子供の頃からタクシーに興味があった。 自由な勤務、休みの多さ、一日中大好きな運転、ドライブが出来る職業というイメージで、いつかタクシーに乗るんだという気持ちがあった。 その頃、その夢?が叶ってタクシーに乗ると、まさに運転席は俺がイメージしていた通り、またはそれ以上のパラダイスだった。 自由で、好きなことをしてお金がもらえる。 トラックドライバーの叔父に嬉しそうにそのことを話したんやと思う。 「お前タクシー乗っとるんか…そんなんやめた方が良い。タクシーはな、『運転手の墓場』言われとるんや」 今でも忘れられない言葉である。 それ以来、叔父とは連絡を取っていない。 しかし、今思えば叔父も恐らく軽い気持ちで発した言葉である。 俺がタクシーの楽しさ、そしてタクシーのイメージを変えていくんだという話をしたら、きっと聞いてくれただろう。 同じドライバーとして、いろんなアドバイスもくれたかもしれない。 そんな大事な叔父さん、なにより俺を愛してくれていた人に何十年も会わずに亡くなった知らせを聞いたことにショックを受けた。 タクシーは墓場やない パラダイスなんや もう叔父さんに伝えることは出来ない。 あの頃の俺のような若い奴らに伝えていこう。 タクシーに乗ろう。

「お菓子、食べます?」

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水曜の夜は悪い 夜中の12時過ぎまで働いてんのに、何も仕事がなければみじめなもんである 青木駅 でアマゾンのハロゲンヒーターを物色していた GOが鳴る おー! 嬉しい 配車先に行くと、見た目20代の男女 近場のパターンである 仕事出来たらなんでも良い 行き先を聞くと、 「西宮今津まで」 ノバッ!(ノットバッド 悪くない) 深夜の若者乗車はこちらとの会話はほとんどない 「今日で家出4日目」 女の子が自慢気に言う 「やば」 男子答える 「今度うち来る?」 「なんで?」 「うちのロクでもない親に会ったら?」 「こわ」 ほんまに怖い 俺も娘(大学生)に言われてるのかな 「わたしのお父さん、タクシードライバーやで。ロクでもない」 降り際、女の子がこっちに降ってきた 「お兄さん、食べます?」 「おじさん」でなく、「お兄さん」と呼ばれたことにテンション上げて振り向くと 食べかけのお菓子 「いや…ありがとう。やめとくわ。夜中(お菓子)食べると良くないし」 「夜中に食べるのがおいしいんやないですか」 「わかるけど」 完全なめられてる 俺だけやない 「タクドラ」がなめられてるんや 11月20日(水) 51、730 31回 12月度累計 115,320 2乗務

空港が見たい

まだ梅雨に入る前の、少し日差しのきつい午後だった。 タクシーの仕事はまず、朝が勝負 通勤利用から、午前中の病院通いなどでひっきりなしに仕事が入る。 ここでいかに効率良く動くかが一日を左右する。 良いスタートが切れたからと言って、その日がうまくいくわけではない。 しかしスタートにつまづけば、その日が終わる… ここは成功を求める勝負ではなく、失敗を逃れる戦いである。 仮に朝一で大阪(遠方)が当たって1万ほど上がっても、行って帰って2時間かかれば、近場をまわっていても同じくらいは出来るのである。 逆にここで時間2千(円)ほどの失態を犯せば、なかなか取り戻せないという流れになることが多い。 このピリピリした戦いはおよそ昼過ぎまで続く。 タクドラは12時に昼飯を食っていては仕事にならない。 病院帰りの年配者、昼の買い物帰り、仕事の会食での利用などの需要を掴んでからでないと飯は食えない。 そしてやっと14時過ぎに一息つける そのころだった。 駅から少し離れたマンション街の一角で、老人がこちらを見ていた。 手を上げるでもない。 しかしこちらを見ている。 こっちも気になるからその老人を見ると、目が合う。 すると右手を少し上げようと、平行までいかないくらい、手を動かした。 えっ?何? 通り過ぎようとしながら、さらに見ていると、平行をやや超えるくらいまで手が上がった。 俺が車を停めたときは既にその老人を20メートルくらい通り過ぎていた。 バックして、老人の前につける。 「いやぁ、悪いな」 「こんにちは」 近いところだから、手を上げづらかったんやろな。 午後になれば、客を捕まえるのも一苦労になる。 近くても、その辺で油を売っているよりは良い。 そう思って、わざわざバックしてまで、仕事を取りに行った。 「空港行ってくれるかな」 「空港?ですか?」 「うん、神戸空港」 遠いやないか。 6千円くらは出るかな。 「わかりました(ラッキー)」 「空港行って、ちょっと空港見たいだけやから、そのまま、またここまで戻ってきてほしいんやけど」 「…往復、ですか?(ラッキーすぎる)」 俺は車を走らせた。 「…ちょっと、これなんとかならんのか」 老人は、後部座席前にあるタクシーGOのタブレットを指している。 「これが邪魔で景色が見えへんねん」 「はぁ…それ外せるのかな」 「前(助手席)に座っても良いか?前の景...

わたしもうすぐ死ぬんです

このブログを書くに当たって、入社時から時系列に整理して書いていこうと思って書き始めた。 ある程度投稿がたまったら、リンクや画像も整理して少しづつみんなに読んでもらいたいと。 しかし、昨日あったことは今書いておきたい。 結局、タクシーってそうなんよ。だ¥ そのとき書かないと、忘れてしまう。 その忘れてしまうようなひとつひとつの出来事、車内で起きたことはめちゃめちゃ価値があって、ほとんどのドライバーはそれを知らず知らず捨ててしまっている。 結局、タクシーの価値は上がらない。 その「出来事」を記録しないとあかん。 それが集まったら、めちゃ価値あるコンテンツやから。 前置きは良いか 昨日の午後、東灘のあるリハビリ施設から乗車の老人男性。 見た目は80歳くらいかなと。 小太りで、メガネをかけた、温和そうな男性やった。 「暑いね」 「いや、ホント暑いっすよねー」 ちょっと返しが関東弁ぽかったかな、と反省する。 自分にとっては、それほど堪える暑さでもなかった。 暑いのは好きだ。 「タクシーがね、なかなか来ないかと思って」 「今日は午前中JRが止まって、タクシーも結構遠方に出払ってたかもしれませんが、たまたま近くにいました(笑)」 「タクシーがないと、もう生きていけへんからね」 随分極端な話やな…老人男性は続けた。 「病気でね、もう車にも乗れないし、タクシーだけが頼りやねん」 そういう話はよく聞くが、男性は「病気」には見えなかった。 「病気なんですか…そうは見えませんけど」 「がんなんですよ。大腸のね。数年前に一度入院して手術したんやけど、もうそのときはステージ4やって」 「数年前(にステージ4)ですか…」 「先生に聞いたんよ。いったいわたしあと何年生きられるんですかって」 「自分から余命を聞いたんですか…」 「そら、知りたいやん。それ知らんかったら、これから何するかとかもあるやん」 「はぁ…(そんなん知ったら、いろいろやる気なくなるんちゃうかな)」 「聞いたらな、あと1年から持って3年やって」 「…それが何年前なんですか?」 「3年前や」 「…」 「そろそろ『そのとき』や」 「…」 よくそんなこと、見知らぬタクシー運転手に話せるな。 しかも全然悲壮感もなく、大谷が今日もホームランを打ったな、みたいな感じで話してた。 「でも余命宣告って最悪のことを想定して言うんちゃいますか」 「そ...